一般化粧品と薬用化粧品の違いを徹底解説!

法規制・ガイドライン解説

美容関連の商材を提供されている企業・個人事業主の皆様、そしてアフィリエイトや案件を通じて美容情報を発信されているインフルエンサーの皆様、日々の広告表現について、法的な規制を意識されていますでしょうか?

消費者に正しく、そして魅力的に商品を伝えることは非常に重要ですが、同時に虚偽・誇大な表示は景品表示法や医薬品医療機器等法(薬機法)によって厳しく規制されています

特に、一般化粧品と薬用化粧品(医薬部外品)では、広告で表現できる効能効果の範囲が大きく異なります。

この記事では、この重要な違いと、美容広告で注意すべきポイントを徹底解説します。


1. 「化粧品」と「医薬部外品」って、どう違うの?

まず、広告規制の前提となる製品の定義を確認しましょう。

医薬品医療機器等法では、製品の「目的」と「人体への作用」によって分類が分けられています。

  • 化粧品(一般化粧品)
    • 定義:人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つことを目的とし、人体に対する作用が緩和なものを指します。
    • 例:一般的なシャンプー、基礎化粧品、ファンデーション、香水など。
  • 医薬部外品(薬用化粧品を含む)
    • 定義:人体に対する作用が緩和なもののうち、例えば「吐きけその他の不快感又は口臭若しくは体臭の防止」「あせも、ただれ等の防止」「脱毛の防止、育毛又は除毛」といった特定の目的のために使用されるものを指します。
    • 例:薬用シャンプー、薬用歯磨き、育毛剤、腋臭防止剤、ニキビを防ぐ目的の薬用化粧品など。

つまり…

一般化粧品=美化目的
医薬部外品(薬用化粧品)=予防、改善目的

というのが主な違いです。

この定義の違いが、広告で表現できる内容の根幹をなしています。


2. 一般化粧品の効能効果:定められた範囲を厳守!

一般化粧品の広告においては、医薬品医療機器等法で定められた「化粧品の効能効果の範囲」(全56項目)にある表現しか原則として使用できません

これは、化粧品が「美化」「健やかに保つ」といった目的を持つ、人体への作用が「緩和」なものであるためです。

以下が効能効果の範囲の一覧です。

化粧品の効能効果の範囲一覧
  1. 頭皮、毛髪を清浄にする。
  2. 香りにより毛髪、頭皮の不快臭を抑える。
  3. 頭皮、毛髪をすこやかに保つ。
  4. 毛髪にはり、こしを与える。
  5. 頭皮、毛髪にうるおいを与える。
  6. 頭皮、毛髪のうるおいを保つ。
  7. 毛髪をしなやかにする。
  8. クシどおりをよくする。
  9. 毛髪のつやを保つ。
  10. 毛髪につやを与える。
  11. フケ、カユミがとれる。
  12. フケ、カユミを抑える。
  13. 毛髪の水分、油分を補い保つ。
  14. 裂毛、切毛、枝毛を防ぐ。
  15. 髪型を整え、保持する。
  16. 毛髪の帯電を防止する。
  17. (汚れをおとすことにより)皮膚を清浄にする。
  18. (洗浄により)ニキビ、アセモを防ぐ(洗顔料)。
  19. 肌を整える。
  20. 肌のキメを整える。
  21. 皮膚をすこやかに保つ。
  22. 肌荒れを防ぐ。
  23. 肌をひきしめる。
  24. 皮膚にうるおいを与える。
  25. 皮膚の水分、油分を補い保つ。
  26. 皮膚の柔軟性を保つ。
  27. 皮膚を保護する。
  28. 皮膚の乾燥を防ぐ。
  29. 肌を柔らげる。
  30. 肌にはりを与える。
  31. 肌にツヤを与える。
  32. 肌を滑らかにする。
  33. ひげを剃りやすくする。
  34. ひげそり後の肌を整える。
  35. あせもを防ぐ(打粉)。
  36. 日やけを防ぐ。
  37. 日やけによるシミ、ソバカスを防ぐ。
  38. 芳香を与える。
  39. 爪を保護する。
  40. 爪をすこやかに保つ。
  41. 爪にうるおいを与える。
  42. 口唇の荒れを防ぐ。
  43. 口唇のキメを整える。
  44. 口唇にうるおいを与える。
  45. 口唇をすこやかにする。
  46. 口唇を保護する。口唇の乾燥を防ぐ。
  47. 口唇の乾燥によるカサツキを防ぐ。
  48. 口唇を滑らかにする。
  49. ムシ歯を防ぐ(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。
  50. 歯を白くする(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。
  51. 歯垢を除去する(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。
  52. 口中を浄化する(歯みがき類)。
  53. 口臭を防ぐ(歯みがき類)。
  54. 歯のやにを取る(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。
  55. 歯石の沈着を防ぐ(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。
  56. 乾燥による小ジワを目立たなくする。

化粧品の効能効果に関しては、上記の一覧の中から適切なものを言い換えて広告表現として使用できます。

では、実際によくある表現の例を見てみましょう。

効能効果の範囲実際に使われる広告表現
頭皮、毛髪を清浄にする頭皮の汚れをすっきりオフ
香りにより毛髪、頭皮の不快臭を抑える心地よい香りで気になるニオイをケア
頭皮、毛髪をすこやかに保つ健やかな髪と頭皮環境へ
毛髪にはり、こしを与えるボリューム感のある髪に
頭皮、毛髪にうるおいを与えるしっとりと潤う髪へ
頭皮、毛髪のうるおいを保つ乾燥から髪を守り、潤いをキープ
毛髪をしなやかにする柔らかくまとまる髪に
クシどおりをよくする指通りなめらかな髪へ
毛髪のつやを保つ自然なツヤをキープ
毛髪につやを与える光沢のある美しい髪へ
フケ、カユミを抑えるかゆみを防ぎ、フケ対策にも
毛髪の水分、油分を補い保つ水分と油分のバランスを整える
裂毛、切毛、枝毛を防ぐ枝毛・切れ毛を防止
髪型を整え、保持するスタイルを長時間キープ
毛髪の帯電を防止する静電気から髪を守る
ニキビ、アセモを防ぐ(洗顔料)ニキビを防ぐ洗顔ケア
肌を整えるなめらかな肌に導く
肌のキメを整えるキメ細やかな素肌へ
肌荒れを防ぐ肌荒れを防ぎ、なめらか肌に
肌をひきしめる引き締まったハリ肌へ
皮膚にうるおいを与える潤いをチャージ
皮膚の水分、油分を補い保つ水分油分のバランスをサポート
皮膚の乾燥を防ぐ乾燥を防ぎ、しっとり肌へ
肌にはりを与えるピンとしたハリ感のある肌へ
肌にツヤを与えるツヤめく輝き肌に
肌を滑らかにするすべすべの素肌へ

特に注意が必要な表現例

ニキビに対する効能効果

化粧品の効能効果で認められているニキビへの効果は、一覧の18番目にあたる「(洗浄により)ニキビ、アセモを防ぐ(洗顔料)」のみです。

これは、洗顔料で顔を洗うことで、余分な皮脂や汚れを落とし、ニキビの原因になるアクネ菌が過剰に繁殖するのを防ぐことができるからです。

あくまでも予防ができるだけで、すでに出来てしまったニキビの改善効果は謳えません

また、一般化粧品では、洗顔料以外の化粧水などでニキビへの言及もできません

睫毛に対する効能効果

化粧品の効能効果範囲の中で言われている「毛髪」は髪の毛だけではなく、睫毛や眉毛など、髪以外の毛も含まれます。

つまり、睫毛に対しての効能効果として謡えるものは

  • 毛髪にハリ、コシを与える
  • 毛髪にうるおいを与える
  • 毛髪の水分、油分を補い保つ
  • 毛髪をしなやかにする
  • 毛髪のつやを保つ
  • 毛髪につやを与える

といったものです。

この中に毛を伸ばしたり増やしたりする効果は含まれていません。

近年、睫毛美容液が多く展開されていますが、一般化粧品では「睫毛が伸びる」「睫毛が生える」といった表現はNGです。


3. 薬用化粧品(医薬部外品)の効能効果:承認された範囲とその作用機序!

先ほどまでの説明で、「あれ?でも、ニキビに効くって言ってる化粧水とかあるよ?」と思った方もいるかもしれませんね。

医薬部外品(薬用化粧品)の場合、その製品が承認を受けた効能効果の範囲であれば、広告で表現することができます。これは、化粧品よりも一歩踏み込んだ特定の目的が認められているためです。

ですから、化粧品の効能効果の範囲を超える場合には、

  • その製品が薬用化粧品であるかどうか
  • どの成分で、どんな承認を受けたのか

というのを確認することが大切です。

また、承認された効能効果の範囲内であれば、その作用機序についても表現することが認められています

作用機序とは、その成分が効果を発揮する仕組みや順序のことです。

医薬部外品の具体的な効能効果の例

有効成分主な効能効果含まれる製品例
イソプロピルメチルフェノール(IPMP)ニキビの原因菌(アクネ菌)の殺菌、防臭・制汗薬用洗顔料、薬用デオドラント
グリチルリチン酸ジカリウム(グリチルリチン酸2K)肌荒れ防止、炎症抑制、ニキビ予防薬用化粧水、薬用クリーム
サリチル酸ニキビ予防、角質軟化作用、防腐作用薬用洗顔料、薬用ローション
トラネキサム酸メラニン生成を抑制し、シミ・そばかすを防ぐ薬用美白化粧品
ビタミンC誘導体(アスコルビン酸誘導体)メラニン生成抑制、美白、ニキビ予防、肌荒れ防止薬用美白美容液
アルブチンメラニン生成抑制によるシミ・そばかす防止薬用美白クリーム
プラセンタエキスメラニン生成抑制、美白、肌荒れ防止薬用美白美容液
イオウニキビ予防、皮膚の殺菌・角質軟化薬用洗顔料
オクトピロックス(ピロクトンオラミン)フケ・かゆみ防止、抗菌作用薬用シャンプー
クロルヒドロキシアルミニウム(ACH)制汗、わきが防止、抗菌薬用デオドラント

医薬部外品では、上記のような成分が有効成分として承認を受けています。

その成分を使っているから医薬部外品になるというわけではなく、その商品ごとに企業が自ら申請し、効果が認められた場合に医薬部外品として販売ができるようになります。

一般化粧品では有効成分というワードは使えません。
有効成分とは、医薬品や医薬部外品にのみ許された表現です。


4. 共通して注意すべき広告表現の落とし穴

一般化粧品・薬用化粧品を問わず、美容広告で特に注意すべき一般的な規制があります。

これらの規制は、景品表示法や医薬品医療機器等法(薬機法)に基づいています。

最大級の表現の禁止

「最高級」、「最高レベル」、「日本一」、「ベスト」といった最上級の表現や、「絶対」、「誰でも簡単に」といった効果が確実であるかのような断定的な表現は、客観的な立証が困難であるため、虚偽誇大表示にあたるおそれがあります

また、「売上No.1」、「顧客満足度ランキング第1位」のような表示も、合理的な根拠がなければ不当表示に該当する可能性があります。
ただし、化粧品においては、効能効果や安全性に該当しない「売り上げNo.1」等の表現で、客観的調査に基づく結果を正確適切に引用し、出典を明らかにしながら表現することは差し支えありません

体験談・ビフォーアフター写真の不適切な使用

化粧品等の効能効果や安全性に関する愛用者の感謝状、感謝の言葉の例示、使用経験や体験談(タレントや自他者を問わない)広告は、客観的裏付けとはなりえないため、消費者に誤解を与えるおそれがあるので原則として行わないこととされています。

ただし、効能効果や安全性以外の使用方法・使用感・香りのイメージ等に関しては、事実に基づく使用者の感想の範囲であれば認められます。

「個人の感想です」「効果を保証するものではありません」といった表示があっても、広告内容全体で商品に健康保持増進効果があると誤認させる場合、虚偽誇大表示とみなされます。

ビフォーアフター写真は、メーキャップ効果等の物理的効果を表現する場合には使用できますが、事実の範囲内であって効果や安全性を保証する表現とならないよう注意が必要です。
例えば、「メラニンの生成を抑え、シミ、ソバカスを防ぐ」という効能表示が認められた薬用化粧品の広告において、シミ・ソバカスのない肌と、製品使用後に紫外線暴露してもシミ・ソバカスが目立たない肌の写真を「防ぐ」効能効果を表現するために使用することは認められません。

「国が認めた」かのような誤解を与える表現

「消費者庁承認」、「消費者庁長官許可」、「○○省承認」、「○○省推薦」、「○○省確認済」、「政府機関も認めた」など、国や公的な機関が許可や承認を与えたかのように誤認させる表示は禁止されています。

例えば医薬部外品を「国に効果を認められた化粧品!」といったように表現するのもNGです。

また、似たような規制として、医者や専門性の高い権威のある人物や機関による推薦もNGです。

アフィリエイト・インフルエンサーによる広告の責任

商品・サービスを提供する事業者が、アフィリエイターやインフルエンサーに依頼して口コミ情報や記事を掲載させる場合、その内容が実際よりも著しく優良または有利であると一般消費者に誤認させるものであれば、景品表示法上の不当表示として問題となります

アフィリエイトプログラムで用いられる広告は「成功報酬型広告」と呼ばれ、検索エンジン、ポータルサイト、動画配信サービス、SNSなど、様々な形でアフィリエイトサイトへ誘導する広告が見られます。

広告主は、アフィリエイトプログラムを利用した広告においても、十分な根拠なく効能効果があるかのように誤認される表示を行わないよう注意する必要があります


5. まとめ:正確な情報提供と適切な表現を

美容広告は、消費者の購買意欲に大きく影響を与えるため、その表現には細心の注意が必要です。

  • 一般化粧品は、法律で定められた効能効果の範囲を逸脱しない
  • 薬用化粧品(医薬部外品)は、承認された効能効果とその作用機序であれば表現可能

そして、いずれの場合も、「消費者に誤解を与えない」「客観的な根拠がある」という大原則を常に意識してください。

曖昧な表現や、消費者を不当に誘引するような表現は避け、事実に基づいた正確な情報伝達に努めましょう。

ご自身の広告表現に不安がある場合は、専門家への相談や、消費者庁や公正取引委員会、関係省庁が公表しているガイドライン(本記事で引用している資料など)を参考に、適正な広告活動を行うことが、長期的な信頼関係の構築につながります。

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